耐震設計をするためにとても大切なのが「構造計算」です。
しかし家を建てられる方で、構造計算とは何なのか?と聞かれて、答えられる方は少ないのではないでしょうか。
今回はそんな「よく聞くけど分かりにくい構造計算」について、詳しく解説をしていきます。
1. 構造計算とは?
ここからはそもそも構造計算とは何なのか?という疑問について解説していきます。
1-1. 構造計算は家の耐震性を確認する方法
日本で家を建てる際には必ず家の耐震性を検証しますが、その時に使われるのが構造計算です。
構造計算とは地震・風・雪・人間などあらゆる荷重に対して柱・壁・床・梁などの構造材が耐えられるかを計算するものです。
この構造材の強さやバランスを計算することから、構造計算と呼ばれています。
計算をしっかり行うことによって、将来予想される災害などに耐えられる家づくりが可能になります。
1-2. 25年に法律が大幅改正
日本の建築基準法には過去から、2階建て以下の木造住宅に適用されてきた「4号特例」と呼ばれる法律があります。
これは家の構造計算を壁量計算とよばれる、構造計算を非常に簡素化した方法で行うことができる上に、確認申請時の構造審査が不要とされる特例措置です。
実はこの特例の範囲が2025年に大きく縮小されることが決まっており、2階建て以上の住宅はすべて構造審査を受けることが必須となることが決まりました。
1-3. 構造計算の重要性
日本の建築基準法は大きな地震があるたびに耐震性を強化する方向で改正されてきました。
この耐震性の基準をしっかりと守っていることを確認するために必ず必要になるのが、構造計算です。
家づくりをする皆様は積極的に構造計算について住宅会社に確認することで、どんな方法で行っているのか、どのくらいの耐震性を目指しているのかを確認することがとても大切になってきます。
2. 構造計算の方法とは
ここからは具体的に住宅で使われる構造計算とはどんな方法があるのかについて解説していきます。
2-1. 構造計算の方法一覧
構造計算の方法には大きく分けると5つの方法がありますが、住宅を建てる際に気にすべき内容は、壁量計算かそれ以外かを気にしておけば大丈夫です。
具体的に建築基準法で認められている構造計算の方法は以下の4つ+壁量計算です。
①許容応力度計算:最も基本的な構造計算。住宅でも使われる
②保有水平耐力計算:許容応力度計算と合わせて、中層の建築物で使われる
③限界耐力計算:高層ビル等で使われる
④時刻歴応答解析:超高層ビル等で使われる
壁量計算:木造2階建て以下の小規模な建築物で使われる
2-2. 許容応力度計算と壁量計算
許容応力度計算と壁量計算の大きな違いはその計算量になります。
許容応力度計算の計算書は約200ページになるのに対して壁量計算は7〜8ページ程です。
では具体的にこの計算量の違いは何からくるのでしょうか?
壁量計算と許容応力度計算でやっていることを列挙してその違いを見ていきましょう。
【壁量計算】
・必要壁量計算:屋根の重さ・階数・床面積から必要な壁(耐力壁)の量を決定する
・存在壁量計算:耐力壁の仕様と大きさで壁の量を判断する
・壁量充足率計算:各階に必要な量の壁があるかを判断する
【許容応力度計算】
・荷重計算:自重以外にも地震や風などの外力(家に掛かる力)を計算
・応力計算:外力が掛かった時に各部材毎に掛かる力(応力)を計算
・断面計算:応力に耐えるために、各部材毎でどれくらいの強度が必要かを計算
許容応力度計算は実際に災害の際に掛かる力を家ごとに計算している点と、各部材毎にどれくらいの強度が必要か計算している点が特徴です。
このようにより実際の災害に近い形で一度シミュレーションをすることで、確実な構造計算ができることが許容応力度計算の優れた部分です。
逆に壁量計算は間取りや壁のバランスなどはあまり考慮されておらず、耐力壁の量だけで判断するため、耐震性は設計者のスキルによるところが大きくなる傾向にあります。
2-3. これからは許容応力度計算が一般的に
実は2025年に壁量計算の規定が大きく改正されることが決まっております。
改正の大きなポイントとして、壁量計算では階高(1階の床~2階の床までの高さ)の制限が厳しくなり、高い天井高や設備用の天井裏スペースを取ることが難しくなります。
この改正への対策として許容応力度計算をすることで、適切に耐震性を計算して階高を確保することができます。
こうした背景から、これからは許容応力度計算が一般的になっていくことが予想されます。
3. まとめ
今回は構造計算について解説していきました。
安心して住める家づくりをするために、構造計算をしっかりと行うことはとても重要なことです。
特に構造計算をする際には許容応力度計算と呼ばれる詳細な計算をすることで、より確実で安心な住宅作りにつながります。
ぜひ今回の記事を参考に、耐震性の高い安心して住める住宅作りに活かしてください。