住宅のバリアフリーを考えるのはまだ早い、と考えている人は多いのではないでしょうか。
しかしバリアフリーの必要性は確実に高まってきていますので、新築の計画段階からある程度配慮することは大切なことです。
今回は、そんな少し先の将来を見据えたバリアフリー設計について解説していきます。
1. バリアフリー住宅の重要性
バリアフリー住宅は、高齢者や障害者が安全かつ快適に生活するために欠かせないものです。
住宅内での事故や怪我を防ぎ、生活の質を向上させるためには、適切なバリアフリー対策が必要ですので、その重要性について考えてみましょう。
1-1. 高齢者に優しい住宅の必要性
高齢者に優しい住宅は、日常生活の中での移動や動作を支援するために必要です。
高齢者は加齢に伴う身体機能の低下により、段差や狭い通路での転倒リスクが高まります。
そのためバリアフリー設計を取り入れることで、こうしたリスクを最小限に抑えることができます。
1-2. バリアフリーとユニバーサルデザインの違い
バリアフリーとユニバーサルデザインは、どちらも住環境の改善を目的としていますが、そのアプローチには違いがあります。
バリアフリーは特定の障害者や高齢者を対象とした設計で、段差の解消や手すりの設置が主な対策です。
一方ユニバーサルデザインは、すべての人々が利用しやすい環境を目指した設計であり、年齢や障害の有無に関わらず誰でも使いやすいように考慮されています。
2. バリアフリー住宅の基本要素
バリアフリー住宅の基本要素には、手すりの設置や段差の解消、視覚と聴覚に配慮した設計が含まれます。
これらの要素を取り入れることで、高齢者の安全性と快適性を向上させることができます。
2-1. 手すりと段差解消の設置
手すりは廊下や階段、トイレ、浴室などで転倒を防ぐために重要です。
手すりを設置することで、高齢者はより安定して歩行や立ち上がりができるようになります。
また段差の解消は、車椅子や歩行器を使用する高齢者にとって不可欠です。
スロープやフラットな床面を設けることで、移動の安全性が高まります。
こうした配慮は、万が一家族が怪我などで歩行が不自由になった時にも有効です。
2-2. 視覚と聴覚に配慮した設計
視覚や聴覚に障害がある高齢者のためには、視覚的なコントラストや音響設計に配慮することが重要です。
たとえば、階段や段差の部分に明るい色を使用して視覚的な区別をつけたり、音響信号を取り入れたりすることで、視覚や聴覚の障害を補うことができます。
階段や段差に識別しやすい色を設けることは、健常者の安全にも寄与するポイントです。
3. バリアフリー住宅の部位ごとの設計ポイント
バリアフリー住宅の設計では、住宅の各部位ごとに特有の対策が必要です。
ここでは、玄関と廊下、浴室とトイレ、リビングと寝室の設計ポイントについて詳しく見ていきます。
3-1. 玄関と廊下の設計ポイント
玄関と廊下は住宅内での移動の要所となるため、特に重要な設計ポイントです。
玄関にはスロープを設けることで、車椅子や歩行器を使用する高齢者が容易に出入りできるようにします。
また廊下には手すりを設置し、広めのスペースを確保することで転倒リスクを低減させることができます。
また広めのスペースをとることは、手すりなどと違って住宅を建てる段階で対応しなければならないため、新築時点で考慮しておくのが大切です。
3-2. バリアフリー対応の浴室とトイレ
浴室とトイレは転倒事故が発生しやすい場所であるため、特に注意が必要です。
浴室には滑りにくい床材を使用し、座れるシャワーチェアや手すりを設置することで安全性を高めます。
トイレには立ち上がりやすいように手すりを配置し、広めのスペースを確保することで、車椅子の利用も可能にします。
水回り関係の手すりは後付け可能なことが多いので、将来的な手すり位置のイメージだけでも持っておくといいでしょう。
3-3. リビングと寝室の安全対策
リビングと寝室は日常生活の中心となる場所です。
リビングには家具の配置に注意し、移動の障害物がないようにします。
寝室にはベッドの高さを調整し、立ち上がりやすいように手すりを設置します。
また夜間の移動を考慮して、足元を照らす照明を設置することも重要です。
お子さんが小さいうちは布団で寝ることも多いかもしれませんが、将来的にはベッドを置くことを考慮した間取りにしておきましょう。
4. まとめ
バリアフリー住宅の設計は、高齢者が安全かつ快適に生活するために欠かせないものです。
手すりや段差の解消、視覚や聴覚に配慮した設計を取り入れることで、住宅内の事故や怪我を防ぐことができます。
また玄関や廊下、浴室やトイレ、リビングや寝室といった各部位ごとに適切な対策を講じることで、より安心して暮らせる住環境を提供することが可能です。
ぜひこうした点も配慮しながら、将来を見据えた設計を検討していきましょう。