OB様インタビュー

OB INTERVIEW
建築家と建てる子育て家族

夫婦主体の、宝箱のような家。愛知県一宮市I様邸

デザイン住宅ならではのスタイリッシュな外観

愛知県一宮市に建つI様邸は、2階建ての新築住宅。ご夫妻が1歳になったばかりのお子様と3人で暮らす、アメリカンスタイルの家だ。2021年の8月から住み始め、今年で1年になる。

|愛知県一宮市I様邸

I様邸は、自由設計による注文住宅ではなく、規格住宅をベースに間取りを設計し直した家である。

今回の取材では、規格住宅だからこそのメリットと暮らしのこだわりについて話を聞いた。

ご夫妻の「好き」が詰まった宝箱のようなマイホーム。この家に訪れる人が感じるワクワクを、本記事をとおして お裾分けできればと思う。

サンクスホームで建てられたご夫婦
|取材をお受けいただいたI様ご家族

シャンデリアと玄関
|玄関の先のリビングダイニングへ

規格住宅だからこそ生まれる余白

玄関の先へ進むと、そこには すぐにリビングダイニングが。ドアを開けてまず目に入る壁一面のブックシェルフには、本や雑貨、CDなどがギュッと詰め込まれている。部屋の奥のカウンターキッチンは、庇(ひさし)のついたデザインが特徴的だ。

「このキッチンのデザインもあって、遊びに来てくれた友人にはよくカフェみたいだと言われます」

そう奥様が話すように、確かにお店のような見た目。ダイニングテーブルにソファを合わせるインテリアコーディネートもあいまって、なんだかアメリカンダイナーっぽい雰囲気もある。それも、古き良き時代な感じの。

「規格住宅で家を建てたので、間取りやデザインは、基本的にはパッケージ通りでなんですよ」

家のデザインを気に入って、マイホームに決めたというご主人。ハウスメーカーをサンクスホームに決めたのも、まずは このパッケージを扱っているという理由からだった。

木を使ったリビング
|I様邸リビングダイニング。写真奥キッチンの庇が印象的だ

規格住宅とは、プロが設計した間取りや 外装・内装デザインなど、あらかじめ用意された仕様に沿って建てる住宅のことである。自由設計の注文住宅とは異なり、施主様が選ぶのは、基本的には細々とした要素のみ。だから、その間取りやデザインをどれだけ気に入ることができるかという点が、家を建て住んでいく上で最も大切なキーとなる。

注文住宅ではなく規格住宅に決めた理由を尋ねると、「間取りはプロに任せたらいいと思って」と奥様。

「注文住宅も考えたけれど、あれこれ悩むより、結局はプロの方が設計した間取りがいいと思いました。その上で、アレンジ程度に、自分達が住みやすくする工夫をしたらいいかなと」

「ゼロから建てても、きっと何かしらの不満が出ます。それなら、商品として完成しているものを選ぶのもありなのかなと考えました」とご主人が続ける。

いくつかの規格住宅を比較検討し、ご自身が理想とするライフスタイルに最も合うこのデザインに決めたというご夫妻。

家を建てるとなると注文住宅をイメージしがちだが、注文住宅ばかりがこだわりの表れではないのかも。

規格住宅は、間取りやデザインが決まっている分自由がきかないと思われがちだが、いわば「完成した間取り」をライフスタイルに取り入れられるからこそ、ご自身の「好き」に注力できるだけの余白が生まれるとも言えそうだ。

それはもしかすると、お気に入りの綺麗な箱を見つけては その中に宝物を入れていた、子供の頃のあの感じに近いのかもしれない。

リビングダイニングのブックシェルフにたっぷりと詰め込まれたI様ご夫妻の「好き」を眺めながら、I様ご夫妻にとってのマイホームはきっと優れたBOXなのだろうと、筆者は想像した。

無垢材の壁
|ご夫妻の「好き」が詰め込まれた空間

間取りのアレンジで「らしさ」をプラスして

規格住宅でマイホームを建てたI様ご夫妻。

あくまで基本があり、その上で、ご夫妻の希望に沿って間取りを整えた。

設計時を振り返りつつ、ご夫妻は「かなりぶつかったよね」と笑い合う。

「譲れないところがお互いにあったので…結局は私が折れたんですけど」と苦笑いするのは奥様。

それは例えば、日当たり。

中庭に通ずる大きくて高い窓が印象的なリビングだが、北向きのため、日当たりが良くないことを奥様は懸念していた。

ただ、実際建ててみると、思わぬ利点が。

確かに日当たり抜群ではないけれど、その分 夏でも涼しい。

コの字の間取りの真ん中の空間に位置する中庭は、屋根の構造上意外と日当たりが良く、また同時に日陰も確保されるので、お子様が過ごすのにも最適だ。

カーテン
|中庭に通じる窓からは、柔らかい光と風が入ってくる

サンクスホームのお施主様
|「今ではこの間取りで良かったと思います」と微笑む奥様

また、吹き抜けをなくし、その分2階を2部屋に増やしたことも、ご夫妻ならではの間取りのアレンジだ。

I様邸の間取りは、3LDK。

現在は1階の1部屋を子供部屋、2階の1部屋を寝室としているが、ゆくゆくは1階に寝室を移し、平屋のように使いたいそう。

「小さな子供のために和室を作るということもよく聞きますが、僕たちの場合、僕と妻がどれだけ心地よく過ごせるかということを最も大切にしました。子供はきっとあっという間に大人になりますし、子育てを終えてからの方が人生は長い。だから、子供中心の間取りにしないことで、かえって将来的にも、家族全員が暮らしやすくなると思ったんです」

その言葉のとおり、家族が集まる空間には最もこだわった。

ご主人のご実家のお庭だった土地に建てられたこの家。

土地の広さは決まっていたので、その中でリビングダイニングの広さを十分に確保できるよう、もともとの間取りから玄関スペースを縮小。これも、「らしさ」のためのアレンジである。

そういえば日当たりの話題の中で、ご主人がこんなことを言った。

「実は絵を飾るのが趣味なので、日当たりが良過ぎると絵が焼けちゃうなという心配もあったんです」

奥様は「そんな理由もあったの!?」と初めて知った様子で驚きつつ、しょうがないなという優しい顔で笑う。

まだ30代になったばかりのご夫妻だが、この広々とした居心地の良いリビングダイニングで、きっと何十年後も笑い合っていらっしゃるのだろうなと、穏やかな気持ちになった。

暮らしの中のアート
|日差しも計算された場所に飾られるアート

アイアン手摺と階段
|階段を上がった先には寝室を含む2部屋がある

同世代のスタッフがいるサンクスホーム

規格住宅の豊富なラインナップに惹かれて ハウスメーカーをサンクスホームに決めたというI様ご夫妻だが、ラインナップ以外の意外な点でも、ご満足いただいたようだ。

「スタッフの方に、同世代の方が多かったんです。担当の方にも、ちょうど昨年自分も家を建てたとか、ライフステージが同じくらいの方がいて。ハウスメーカーとしてより一個人のアドバイス…のようなものを沢山もらえたので、良かったなと思っています」

「近い歳の方の意見が聞けるというのは、育ってきた環境が近いという点でもありがたかったです。それはやっぱり趣味だったり、価値観が似ているということなのかも。こちらが伝えたいことをフワッと投げるだけで、しっかり受け取ってくださる感じがありました」

例えば、先にもご紹介したブックシェルフは、一部ベンチになっている。

「人が沢山集まる家にしたい」というご夫妻のイメージをもとに、サンクスホームが備え付けた家具だ。

流行りのミニマリストもいいけれど、多くのカルチャーに触れてきた世代は、どうしてもマキシマリストになってしまう。

一つ一つの物にこだわりと思い入れをもつご夫妻にとって、お洒落に収納でき、かつ人が集まったときにはベンチにもなるという一石二鳥な家具は、暮らしに欠かせない要素となっていそうだ。

|備え付けのブックシェルフベンチ

ブックシェルフベンチ
|キッチンとタイルのデザインを合わせた洗面も、奥様のご意見を受けてのオリジナルだ

新築住宅なのに友人がくつろげるヒミツ

「新築って独特の雰囲気があるじゃないですか。それは木の強い匂いや、住んで日が浅いからこその生活感のなさなのかな。なんとなく、自分はどこに座っていたらいいんだろうというような、ソワソワした気持ちを感じてしまうことが多いんです」

新築住宅は緊張してしまうというご主人は、そういう経験があったからこそ、友人にとっても居心地の良い空間づくりを目指したそうだ。

そういえばI様邸は、独特の心地よさがある。

親近感というか、どこか知っているような雰囲気に満ちているのだ。

それはきっと、ご夫妻の「好き」が部屋中に溢れているからだろうと思う。

決して少ないとは言えない趣味の数々が、隠すことなく、しかしお洒落に並べられている。

普通ものが多いと収納に隠してしまいがちだが、見せるための工夫をすることで、それがかえって、共感できるような居心地の良さを作っているのだ。

「好き」というのは、すなわち「らしさ」である。ご夫妻の「らしさ」が滲み出ることで、新築独特の緊張感が薄れ、ご友人にとっても くつろげる空間になるのだろうと想像した。

鏡とトイレ
|トイレの鏡も、ご主人の「好き」なショップのもの

「初めて家に来て、寝ちゃうような友人もいるんですよ。くつろいでくれてるんだろうなと、嬉しい気持ちになりました」

そう笑うご主人には、ここに越してから新たな趣味もできたそうで…

「観葉植物が好きです。もともとはインテリアとして興味を持ったんですが、今ではすっかり育てることにハマってしまって、さまざまな種類の多肉を買ってきて並べています」

窓枠と多肉植物
|お洒落に並べられた多肉たち。中にはかなりレアなものも

それぞれの観葉植物の鉢に貼られたステッカーもまた、ご主人の自作。

専用のキットで手書きのものをスキャンし、手作りしているようだ。

「最初は、友人が来たときにトイレの場所が分かりづらいなと…『Toilet』の表示を作るために始めたんです。思いのほか楽しくて、今ではいろいろな物に貼っては楽しんでいます」

自作ステッカー
テイッシュボックスと自作ステッカー

「好き」が詰め込まれている家

最後に見せていただいたのは、中庭。

中庭とリビングにはハンモックがかけられる場所があり、この日は中庭にかかっていた。友人が大勢来る時は、窓を開け、中庭までリビングを延長させるようにしているそうだ。

中庭・ハンモック・ウッドデッキ
|プライベートが守られているコの字の中庭には、ハンモックがかけられている

取材を忘れてしまうような心地よさを感じながら、ハンモックに座らせていただいていると、窓の向こうからお子様がこちらを見ていることに気が付く。

もう少し大きくなったら、彼もまた このハンモックに座りながら、何か考え事をするようになるのかもしれない。

ご夫妻の「好き」に大いに感化されつつ、息子さんもまた自身の「好き」を見つけていくのだろう。

間取りにおいて子育てに重きを置いていないと話すご夫妻だったが、しかしむしろお子様にとって、両親の「好き」に浸かりながら育つ時間は、かけがえのないものになるのではないだろうか。

随所に「好き」が詰め込まれている家。

訪れた人自身の「好き」も自ずと刺激され、静かにワクワクしてしまうようなこの感覚は、やっぱり宝箱に似ている。友達のとっておきを見せてもらう、あの感じ。

家族全員が大人になったとき、この宝箱には、一体どんなものが詰め込まれているんだろう。

その時々の「好き」は変わるにしても、きっとこの先もずっと、ものと人と笑顔で溢れる、居心地の良い空間が続いているはずだ。

リビングとダイニング
|家族の「好き」がこの先も詰め込まれていくリビングダイニング